認知症とは
認知症とは、脳の変性疾患や脳血管障害によって、記憶や思考などの認知機能の低下が起こり、6カ月以上にわたって、日常生活に支障をきたしている状態です1)。
認知症の主な原因疾患は、脳の変性疾患であるアルツハイマー病が一番多く、次いで、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によって起こる脳血管性認知症が多くみられます1)。その他にはレビー小体の変性によるレビー小体型認知症や、ピック病による前頭側頭型認知症などがあります。65歳未満で発症すると若年性認知症と言われます。
認知症ともの忘れの違い2)
認知症の主な症状としてもの忘れがありますが、健常な人にも、もの忘れは起こります。正常なもの忘れと認知症のもの忘れの違いを区別するためには、以下のような点がポイントとなります。
- 認知症のもの忘れは、「毎日通勤している道や自分の家がわからなくなる」、「大事な仕事の約束を忘れる」、「ご飯を食べたこと自体を忘れる」など、日常生活に支障をきたすような内容や出来事そのものを忘れてしまいます。正常のもの忘れは、「昨日夕食で何を食べたかを忘れた」、「テレビで見た有名人の名前が思い出せない」など部分的な内容を思い出せないことが多く、日常生活に支障をきたすことはありません。
- 認知症の場合は、もの忘れに気づきませんが、正常なもの忘れでは気づいて思い出そうとします。
- 認知症では新しいことが覚えられませんが、正常なもの忘れでは新しいことを覚えることができます。
- 認知症では暴言や暴力がみられたり、気力がなくなったりなどの性格、人格の変化や妄想がみられることがありますが、正常なもの忘れではありません。
軽度認知障害(MCI)とは3)
認知症の主な前駆症状として記憶力の低下がみられることから、平成11年にPetersenらにより、軽度認知障害は、「記憶障害がみられるけれども認知機能は保たれ、日常生活にも影響がない」とする内容の定義が提唱されましたが、平成16年にWinblad B らによって、軽度認知障害の定義が以下のように提唱されました。
- 認知症または正常のいずれでもないこと
- 客観的な認知障害があり、同時に客観的な認知機能の経時的低下、または、主観的な低下の自己報告あるいは情報提供者による報告があること
- 日常生活能力は維持されており、かつ、複雑な手段的機能は正常か、障害があっても最小であること
軽度認知障害は、健常でも認知症でもない中間の状態で、認知症へと移行する可能性のある記憶障害の低下、認知障害がわずかにみられるが、日常生活に影響するほどではない状態と言えます。
認知症の疫学
厚生労働省によると、平成24年現在、日本の65歳以上の高齢者における、認知症有病率推定値は15%で、認知症有病者数は約462万人と推計されとされています。軽度認知障害(MCI)の方の有病率は13%と推定され、約400万人の軽度認知症の方がいると推計されています1)。
年間における発症率は、65歳以上で1~2%、65~69歳で1%以下、80~84歳で8%となっています3)。
認知症の有病率調査の久山町研究データによると、2012年現在の認知症有病率から2025年の認知症有病率を計算すると19%となり、2025年の認知症有病者数は675万人と推計されています。糖尿病の有病率が認知症の有病率と関連していることがわかっており、今後、糖尿病有病率が増加することにより、認知症有病率も上昇した場合は2025年には20.6%となり、糖尿病有病者数は730万人にのぼると推計されています4)。